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2011年11月 の伝言板を読む
2011年09月 の伝言板を読む
「時代のサカイ目」第三十八回(11.10.27) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第三十八回「いま注目したい木村拓哉と坂本冬美の“発情期”」 木村拓哉主演の『南極大陸』が、久々の骨太なドラマに仕上がっていて楽しめる。 初回は2時間超の拡大枠だったこともあり、最高視聴率が25・5%(ビデオリサーチ、 関東地区調べ)と、視聴者の期待の大きさを物語る。 木村が特別に演技がうまい役者だとは思わない。むしろ、アイドル発の国民的人気が 邪魔をして“キムタク”というキャラクターが先に立ち、どんな役を演じてもキムタクになる。 その分、ストーリーがしっかりとして丁寧に描き込まれた脚本の作品に出合うと、 熱演のキムタクと相乗効果となり、大きな輝きを放つ。今回の彼がその状態である。 加えて香川照之、柴田恭兵、緒形直人、堺雅人、綾瀬はるか…など芸達者な演技人に 囲まれたことで、木村個人の魅力を引き出すというよりも、ストーリーを楽しめる大衆娯楽の スケール感を大きくしている。 主題歌「荒野より」は中島みゆきの新曲になる。「犬の気持ちになって越冬隊員のことを 想い、歌詞を書いた」と中島が言うように、このドラマのために書き下ろした作品。 楽曲は、戦後10年を舞台に、復興のために決して諦めることのなかった日本と日本人を 象徴するような、南極観測船と越冬隊員の力強さが伝わる作品で、この歌以外、主題歌は あり得なかったのではと思わせるほどの仕上がりだ。 『プロジェクトX』の主題歌だった「地上の星」がサラリーマンたちのエール曲として いまなおカラオケで歌い継がれているように、「荒野より」は日本人へのエール曲として 長く歌われ続けるのではないか。 中島の迫力のある雄々しい「地上の星」とは、趣は違えど迫力で歌っていたのが坂本冬美。 25周年記念コンサートで歌った「地上の星」は、せつない思いを抱えながらも雄々しく 明日に向かう人たちへのエールのように聞こえた。 これまで坂本はうなりやこぶしの効いた演歌の定番のような歌い方に長けた、うまい歌手 として認知されてきた。それが、往年のフォークソングをカバーした「また君に恋してる」の 空前の大ヒットで、うなりもこぶしもない歌い方を身につけた。それが功を奏して、今年の 新曲「おかえりがおまもり」に挑み、「桜の如く」ではうなりもサウンドに合体させ、 ちらりと顔を出す程度の歌い方をしている。 何でもそうだが、チラリズムというのは気をそそるものだ。おそらく今、演歌の女王と 呼べるのは坂本である。歌のジャンルを問わず、何人か女王と呼ばれる歌手はいるが、 女王になる基本条件は、今ヒット曲があること。時代は軽くなり速いのだ。 過去にどれだけたくさんのヒット曲を出していようが、今存在感がなければ過去の女王で しかない。衣装のきらびやかさもステージセットの派手さも、今ヒットしていることに 比べれば些細である。 坂本は、歌姫に必要な旬の発情期声を響かせてもいる。これは技術ではどうにもならない 声で、せつない恋、沁みる恋をしてこなければ出るものではない。いつかは開くだろうと みていた大輪が、やはり艶っぽく品格を備えて開花した。演歌というジャンルを広げ、 歌謡曲、流行歌を歌い続けられるのは、坂本しかいな い。 『夕刊フジ』2011年10月28日号(27日発行)第19面(毎週木曜日連載)
先日家族とサオリストの(聖地)行ってきました! 感激です、本当に(コバルトの海)でした。
「時代のサカイ目」第三十七回(11.10.20) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第三十七回「大人のオンナの真逆の立ち位置」 女優が光り輝くには、演技力だけでなく、その人がどう生きてどう恋してきたかが キーポイントになる。今、鈴木京香がいい。人によって、持って生まれた素地は異なる。 木綿の手触りの人もいればシルクの場合もある。その違いが個性となっていく。 そこに生き様が加味されて、あるとき、化ける。 今の鈴木はビロードのようだ。何とも言えない手触りの心地よさが備わってきた。 この手触りは、どんなに作ろうとしても作れるものではない。生き様の結果として 到達できるものだから。おそらく恋を重ねてきて、今またいい恋の最中だとみる。 加えて、芸能界の波に洗われてきたことで、余分な突起が削ぎ落ちたこともある。 もっとも、恋愛は、片方だけが養分を吸い上げるのでは、どちらもが意外と早く輝きを 失う。逆に、互いが養分を吸い合って育っている恋愛だと、更に更にと高みに登っていく。 噂になっている『セカンドバージン』の共演者、長谷川博己も、この作品で一気に 男の艶を増したことからすると、おそらくふたりは養分を吸い合ういい関係を保っている のだろう。大輪の女優がビロードの手触りを身に付けたとき、公私ともに次のステップを どう踏むのか、楽しみである。 このところ、CMでの露出ばかり目につく藤原紀香の身辺がかまびすしい。デビュー以来、 女優としての才覚は持ち合わせているが、開花させる前に私生活の充実を優先させた感があり、 代表作と言える活動が見当たらない。が、恋愛、結婚騒動でカメラの前に現れた彼女は、 女性としてチャーミングな表情をしてい た。 女優として立つ鈴木とは真逆のような立ち位置が、ふたりの主軸に置くものの違いが 表れているようで興味深い。 芸能界は久々に恋愛・結婚ラッシュの年になった。鈴木と共演している深田恭子にも 恋の話が聞こえているが、深田もこの作品で大人の女優としての魅力を見せていた。 これまで“深キョン”とアイドル扱いでやってきたが、年上の女性と不倫している夫の妻と いう難しい役どころを時に狂気を持って演じたあたり、おそらく彼女も恋の傷みを知った のだろうと思える。女優とは、私生活の心の変化や機微が演技に投影される職業なのだ。 大河ドラマ『江~姫たちの戦国』に出演中の鈴木砂羽も、11歳年下の俳優、吉川純広と 結婚。彼女の透明感がいいという女性は多いが、恋愛続行ではなく結婚を選んだ鈴木が、 女優として、どう変わっていくのか。 年上妻ということで、尽くしすぎると家庭臭さが演技に透けてしまい、透明感にフィルター がかかる。かといって、奔放な妻でいれば、家庭は破綻しかねない。同業の吉川の器量が問われる。 他にも、国分早智子、安めぐみ、小倉優子、吉川ひなの…と、芸能界は久々の結婚ラッシュ に湧いていて目出度いのだが、結婚が代表作かと言われないよう精進してほしいものだ。 『夕刊フジ』2011年10月21日号(20日発行)第19面(毎週木曜日連載)
シンシアの公式HP“Art of Loving”の掲示板、今年5月19日の投稿以来、 5ヶ月に渡って更新がありませんでした。ここ数日中に更新されたようです。 おめでとうございます。 http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/cynthia/board/111011_0.html
湯浅学による音楽評論集『音楽が降りてくる』が、10月30日に発売される。 湯浅は、昭和歌謡の名盤を紹介するユニット「幻の名盤解放同盟」や、バンド「湯浅湾」の リーダー、ラジオ番組『ドントパスミーバイ』のDJ、『爆音映画祭』のレギュラーゲスト など多彩なシーンで活躍する音楽批評家。古今東西のロックをはじめ、歌謡曲、現代音楽、 ブラックミュージック、ハウス、テクノなど、ジャンルの垣根を越えた評論活動を展開している。 湯浅にとって初の本格評論集となる同書は、音楽の「芯」についての論考を堪能できる1冊。 はっぴいえんど、細野晴臣、大竹伸朗、美空ひばり、南沙織、中島みゆき、勝新太郎、谷啓、 ジェームズ・ブラウン、Ramones、The Beach Boys、ニール・ヤング、The Velvet Underground、 マドンナ、Metallica、ボブ・ディランなどが、湯浅独自の視点で語られている。 http://www.amazon.co.jp/dp/4309272797/ref=as_li_tf_til?tag=bello00-22&camp=243&creative=1615&linkCode=as1&creativeASIN=4309272797&adid=03XQ5F6H61FYN09RTFQM&
「時代のサカイ目」第三十六回(11.10.13) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第三十六回「聖子&キョンキョン 触発しあう2人」 松田聖子と小泉今日子が、化粧品のCMで初共演した。撮影で顔を合わせたふたりは、 「今日子さん」「聖子さん」と呼び合い、二十数年前に歌番組で共演して以来の再会にも、 何の違和感もなく楽しそうに話していたという。同じ時代を生きてきた共感が根底にある からだろう。 このCM、見ていて実に清々しさを覚える。ふたりがとてもイキイキしていて、こちらまで うれしくなる。化粧品のCMだが、表面的なこだわりよりも、年齢を重ねたことで吹っ切れた 内面がにじみ出ていて、スポンサーの起用意図に思わず納得する。ふたりとも、アイドルとしての 旬は既に遠のいているが、キャリアからくる本物の美しさとはこういうものかと画面を通して 伝えてくれているようだ。 その松田聖子が、76枚目のシングルを竹内まりやと初コラボした。「特別な恋人」、 作詞作曲はもちろん、プロデュースも竹内。そもそも昨年の聖子の30周年記念の楽曲として 竹内にオファーを出したのが始まり。互いに連絡を取り合いながら共同作業をしてきたが、 多忙のふたりということで、結局、31周年の今年になってしまった。 が、その分、完成度が高く、「胸がキュンとする素敵な大人の恋の歌です。まりやさんの 独特の世界観に溢れるとても美しい曲」と手ばなしで誉めるほどのできあがりになった。 また竹内も、聖子の表現力の源は、声とパーソナリティーが併せ持つ不思議な魅力であると 感じていたようで、彼女のキャンディーボイスが存分に生かされた曲になっている。 これまで聖子はセルフプロデュースでやってきた。自己愛が強い聖子だからこそできたこと でもある。自己愛とは、他者が自分をどう見ているかを考え、どんな状況でも自分をぐっと コントロールして自分のイメージを守るという、スターとしての必須条件。 ただ、聖子の場合、それが強すぎて守る部分がラインからオーバーしていた。そんな彼女に とって、今回のように他者の、まして理解してもらえるひとのプロデュースは、大いに良い ことだ。やや遅きに失した感はあるが、やっと覚醒したことに拍手を送りたい。 一方の小泉は、10年ぶりに、来年1月放送のWOWOWの連続ドラマ『贖罪』に主演する。 湊かなえの同名の原作を黒沢清監督が脚本も手がけて映像化。15年前に娘を殺された母親が、 当時娘と仲良く遊んでいた小学生4人に激情の言葉を投げつけ、心の奥底に潜む人間の毒を 連鎖する悲劇を描いたドラマで、小泉はシリアスな母親役を演じる。 表現者・小泉は、自分を守るすべを実に巧みに心得ている。これまでドラマや映画に出演する 機会が多く、監督や共演者たちと意見交換してきたことで、他者の意見を自分に取り入れる ことを学んできたからである。 他者を全部はねつけてきた、守りの強い聖子は、ある意味、防腐剤を入れ過ぎてかえって 傷みが出ていたとも言える。このふたり、今後いい意味で触発し合えば、さらに美しさに磨きが かかるに違いない。 『夕刊フジ』2011年10月14日号(13日発行)第19面(毎週木曜日連載)
「時代のサカイ目」第三十五回(11.10.6) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第三十五回「最後の銀幕スター高倉健と歌舞伎界入り香川照之への期待」 高倉健が6年ぶりに表舞台に登場する。映画『あなたへ』。 『夜叉』『あ・うん』で高倉と組んだ降旗康男監督から、昨年末に送られてきた脚本を 読み、オファーを快諾。高倉は2005年に中国で公開された『単騎、千里を走る。』以来、 どんなオファーも断り、公の場に出ることはなかった。09年に大原麗子が亡くなった ときも、墓参にはお忍びで行ったほど。 が、「この物語に出会い、心が動きました。人が人を思いやること、生きることのせつなさ を思いました」と高倉。映画は、亡き妻が生前語らなかった思いが綴られた手紙を手に、 なぜ妻がその思いを伝えてくれなかったのか、真意を知るために妻の故郷に向かう初老の 刑務所指導技官を演じる。妻洋子は映画『ホタル』でも高倉の妻役だった田中裕子。 また、自称元中学教師をビートたけし、他にも佐藤浩市、浅野忠信、草彅剛、綾瀬はるか、 余貴美子、三浦貴大など当代の豪華な顔ぶれが揃う。 高倉と言えば、最後の銀幕のスターである。私生活を決して表に出さず、ベールに包まれたまま。 銀幕のスターはタレントではない。私生活や素顔をバラエティー番組などで見せないという ことは、つまり、ファンの手の届くところにいようとはしないのである。 俳優は作品の中だけで勝負するというポリシーを貫いている高倉。若い頃は任侠映画で 邦画を牽引、彼自身の若い頃も任侠のように空想されがちだった。何十年経った今も そのイメージを現在の役柄に重ね合わせてしまうことは、案外高倉の思うところかもしれない。 重鎮が映画界に熱気をもたらすように、歌舞伎界もまた、重鎮が熱気を呼ぶ。市川猿之助が、 その名跡を、歌舞伎俳優で市川段四郎の息子である甥の市川亀治郎に譲り、自らは亀治郎の 曾祖父・初代市川猿翁を襲名するという。 来年6月の新橋演舞場での『六月大歌舞伎』。亀治郎にとって、祖父の三代目段四郎の 五十回忌追善興行となる。猿之助じきじきに後継に指名され、「伯父への恩返しになれば」 との思いで、4代目猿之助襲名を受けた。 何よりも驚いたのが、同じ追善興行で、猿之助の長男で俳優の香川照之が歌舞伎に初出演、 九代目市川中車を襲名すること。更には香川の長男・政明くんも、5代目市川團子として 初舞台を踏む。 香川が1歳のときに、父である猿之助が16歳年上の藤間紫と不倫をして家を出た。 その後、母浜木綿子と離婚。猿之助には1度も会わずに育つ。東大卒業後、役者となり、 25歳の時に猿之助の公演先の楽屋を突然訪問するが、「あなたは息子ではない。 私はあなたの父でもない。何ものにも頼らず精進して一人前の男になっていきなさい」と 突き放される。 それをバネに、数々の賞を受賞し、世界に通用する役者となった香川。脳梗塞で倒れ、 療養中の父を気遣い、今春から同居していることも公表。役者はおろか、歌舞伎役者には したくない、とひとりで育ててきた浜の許可を得てのことだという。浜の懐の深さを見る 思いだ。父と息子、連綿と繋がる血の騒ぎが、六月大歌舞伎でぶつかり合う。 『夕刊フジ』2011年10月7日号(6日発行)第17面(毎週木曜日連載)
シンシアが調布でさよならコンサートを開いた日から33年が経ちます。 あの会場で配られたビラで、仲間を呼びかけ「17会」が誕生しました。 インターネットの普及で、Cynthia Streetも出来て、新しい中間との絆も深まっています。 シンシアがデビューして40周年の今日、引退33周年をお祝いします。 33年間、シンシアのことを思えて、我々ファンは幸せです。
名曲ベストヒット見ました。以前にも同じ番組で出た映像ですが、デビュー直後の 映像で、大変貴重だと思います。着ている洋服は、デビューアルバムのジャケット写真と 同じで、沖縄から持ってきた物だそうです。眼鏡を選んでいる顔が、とても可愛らしい。 白いTシャツ姿で歌ってる曲は、「島の伝説」のようです。(口の動きで判りました)
情報をいただきました。感謝。10月3日(月)に歌番組が放送されます。 テレビ東京 2011年10月3日(月) 20:00~22:48 毎回恒例の番組ですが、映像を期待出来ます。 (番組情報) テレビ東京 『月曜プレミア! 名曲ベストヒット歌謡』 10/03(月) 午後08:00 ~ 午後10:48 【出演者】 司会:竹下景子、モト冬樹 ゲスト:梓みちよ、五輪真弓、岡崎友紀、今陽子、BUZZ、左とん平、弘田三枝子、 ザ・ブロードサイド・フォー(50音順) 【内容】 歌謡曲全盛だった昭和40年代。その10年間の年ごとのベスト3の大ヒット曲を、 「歌謡曲・演歌」と「フォーク・ロック」の2ジャンルに分けて紹介します。 ゲスト歌手によるスタジオライブ、さらに当時の貴重な秘蔵ライブラリー映像を ふんだんに使用。懐かしの大ヒット曲のオンパレードを存分にお楽しみください。 http://www.tv-tokyo.co.jp/official/besthit111003/
「時代のサカイ目」第三十四回(11.9.29) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第三十四回「ジャニー喜多川社長の世界記録と加藤ミリヤの文才」 タレントが長寿番組や映画出演回数などで、世界一とギネス認定されることは珍しくないが、 この度、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長が世界記録の認定を受けた。“新たなるギネス 登録”。その理由は、“最多のベストヒット・シングルをプロデュースした人物”及び “最も多くのコンサートをプロデュースした人物”としてである。 ジャニー社長はジャニーズ事務所所属のタレントたち40組以上のプロデューサーとして 辣腕を振るってきたが、ベストヒット・シングル232曲と、2000年から2010年の間に 8419回ものコンサートをプロデュース。ギネスブックの出版元ギネス・ワールド・レコーズ社 はこのジャニー社長の数字を「驚くべきこと」と評している。 それが人であれものであれ、商品が売れるには商品そのものの魅力をどう引き出すか、 どう戦略を立てて売り出すか、などのプロデュース力が絶対的に必要となる。どんなに いい素材でも、プロデュースの方針を間違えば、売れない。 音楽に限らず、本も同じ。加藤ミリヤが小説を出版した。女子高生のカリスマと言われる シンガーソングライターで、ファッションデザイナーとしても活躍する彼女に、小説を 書かせたいと思ったのは幻冬舎の見城徹社長。つかこうへい氏の『蒲田行進曲』を始め、 直木賞5作品を次々世に送り出した見城社長が、「この人が抱える切なさは尋常じゃない。 このマイナスオーラはきっと文学になる」と確信して依頼したと言う。 10カ月ほどかけて400字詰め原稿用紙に160枚書き下ろした加藤の作品を読んで、 見城社長は池田満寿夫氏の『エーゲ海に捧ぐ』を読んだときに受けた衝撃と似たような 大きなものを感じたそうだ。あまりのできばえに、新人文学の初版は5000部が相場と 言われる中、見城社長は異例の3万部からスタートさせることに。 実は見城社長には、新しいものを産み出すときの鉄則がある。新しいものを生むときは、 担当する人も新人がいい。その持論通り、加藤の担当には入社したばかりの新人を配属。 そんな社長のプロデュース手腕が加藤の小説をどう押し上げるのか。ほどなく答えは出る はずだ。 タレントに限らず、人は誰でも、技量さえあれば面白い小説が一作は書けると言う。 自らの半生を紐解けばいいのだ。タレントの書く小説はどこか私小説の匂いがするのと、 プロデュースのうまさとでベストセラーが多発する。松本人志の『遺書』は250万部、 飯島愛の『プラトニック・セックス』は200万部、郷ひろみの『ダディ』は100万部。 が、彼らはそれで作家に転身しようとは思わない。なぜこんなに売れたのかをきちんと 分析できているからである。自分の筆力だけで売れたとは思っていないのだ。そういう 意味で『KAGEROU』の水嶋ヒロは異色である。もし、彼にしっかりとした プロデューサーがついていたなら、俳優をやめるという選択肢は別のものと変わっていた かもしれない。小説は、読んで惑わし、書いて惑わす妙薬のようである。 『夕刊フジ』2011年9月30日号(29日発行)第17面(毎週木曜日連載) (今までの全部の回がその日の号の真ん中の紙の見開き左側でした。今号のみが 真ん中の紙の一番最初の紙面に載っています)