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2012年12月 の伝言板を読む
2012年10月 の伝言板を読む
発売中のアサヒ芸能2012年12月6日号にアイドル特集が。巻頭の方のカラーグラビア です。「アイドルの名盤100」のタイトルで、7ページに渡って、70~90年代の アイドルを取り上げています。酒井プロデューサーのコメント記事もあります。 永久保存版的価値ありです。
「科学忍者隊ガッチャマン」は、1972年10月1日から1974年9月29日まで 全105話が放送された名作アニメです。先日まで東京MXテレビで何度目かの再放送が 」流れていました。 9月24日(月)に、第85話「G-4号はあいつだ」が放送されました。ここで言う G-4号とは、ガッチャマン4号の「ジンペイ」という少年です。 この回では、ジンペイが悪の組織・ギャラクターのスパイと知り合いになり、そのスパイが ジンペイと姉のジュンの店(スナック)で働くという話です。 ジュンペイが店のカウンターの片隅でテレビを見ている画面が映りました。歌番組が映って いるようです。テレビの音声は流れません。映っている歌手は、麻丘めぐみさんにとてもよく 似ています。 最初の放送日は、1974年の5月の連休あたりです。スタッフにファンがいたのでしょうか。 絵としては、最初に写真一枚目が少し映ります。写真2枚目の絵では、ジンペイが話す場面になり、 5秒ほど映っています。これの二箇所以外は映っていません。
11/22(木)22:00-22:54 放送の BS日テレ『加藤浩次の本気対談!コージ魂!!』のゲストは篠山紀信さん。 レコーダーの番組表の番組概要には“奥様である南沙織の逸話も飛び出す” 森光子さんのドラマといえば、母が見ていた 東芝日曜劇場『天国の父ちゃんこんにちは』が印象に残っています。
森光子さんが11月10日(土)にお亡くなりになったのが、14日(水)に 発表されました。週末のテレビでは、森さんの生前のご活躍が紹介されていました。 ご冥福をお祈りします。 17日(土)の日本テレビの何かの番組でも、森さんの活躍が紹介されていました。 その中でナレーターが次のようなことを言いました。 「それでは、日本テレビが誇る情報ライブラリーの中から、森さんが出演している 最古の番組をご覧いただきます」 私は、東京オリンピックの頃の映像を期待しました。放送されたのは1973年の ホームドラマでした(題名忘れました)。 天下の日本テレビの、森さんの保存されている最古の映像が1973年…。 ちょっとショックでした。
写真です。
「時代のサカイ目」第九十二回(12.11.20) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第九十二回「篠山紀信氏の写真が訴える力」 東京オペラシティのアートギャラリーで開催されている篠山紀信氏の写真展(12月24日まで) を見た。『写真力』とタイトルされた展示会は、氏が50年代から半世紀に渡って撮り続けて来た 120点で構成。会場のアートギャラリーに一歩入った瞬間、息をのんだ。写真が迫ってくるのだ。 展示という枠を越え、天井高6メートルの空間を全て使っての写真芸術の世界。壁一面の大きさに 引き延ばされた写真は、既に写真という既成概念では計り知れないほどのエネルギーに満ちあふれて いた。 まさに、写真力。氏によると、写真力とは「写真の力がみなぎった写真」であり、「写された方も、 撮った者も、それを見る人々も、唖然とするような尊い写真」という。確かに、唖然とする。まずは その迫力に、そして写真に吸い込まれるようにして被写体に惹き込まれて行くことに、更には写真の 時代に一瞬にしてトリップしていることに。全体が破天荒で、全てが初めての世界である。 ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、美空ひばり、山口百恵、大原麗子、三島由紀夫、夏目雅子から 歌舞伎、刺青を入れた人たち、力士、東京ディズニーランドのキャラクターたちまで…。今も華々しく 活躍している人もいれば、引退して別の人生を歩む人も、鬼籍に入った人もいる。誰もがあの場で それぞれの撮影現場を再現しているかのように、時空を飛び越える。 全てが圧倒的な存在感を見せる展示写真を前にすると、カメラマンがファインダーを覗いて 目の前の被写体を撮影するという、ありふれた撮影の光景は思い浮かばない。むしろ、被写体 そのものが命を持ってそこにいるような錯覚にさえ陥る。おそらく撮影時には、氏と被写体の間に ファインダーもなければ空気の壁さえもなかったのだろう。被写体の一瞬の魂を氏が切り取った のではないか。そんな気にさえなる。 写真にはうまい写真といい写真がある。うまい写真はテクニックさえ身につければ何とかなる。 いい写真はそうはいかない。様々なことを語りかけ、どこまでも想像を膨らませてくれるのが いい写真。技術力が前提で、その先、被写体と闘えなければ撮れるものではない。被写体は、 写真家の前で自らセルフプロデュースをする。いくら写真家にいくつもの注文を出されたとしても、 それさえもセルフプロデュースで見せる。 写真家は、写真でセルフプロデュースをする。氏が「被写体をリスペクトしている」と言うのは、 リスペクトすることで被写体の最高の一瞬を見つけることができるのだろう。被写体と自らと、 ふたつの力をどう合わせるか、写真家の芸術性がそこに出る。 夫人(南沙織)が、この展示会のために氏がどれほどの時間を費やし、どれほどの力を注いだかを 話してくれたが、写真の前に立つと、なるほど、と納得である。写真の撮影された時期にいるのだと 錯覚し、被写体が今もそのままの姿でそこにいるような気にさせてくれる写真力は、久々に圧巻だった。 『夕刊フジ』2012年11月21日号(20日発行)第6面(毎週火曜日連載)
「時代のサカイ目」第九十一回(12.11.13) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第九十一回「妻、母、画家、そして歌手 工藤静香の生き方」 女性の秘めた強さこそが美しさだと言われる時代になった。私生活で傷つきながらも話題を 振りまき生きてきた感のある女優陣が勢ぞろいした、舞台『阿修羅のごとく』の制作発表。 加賀まりこ(68)、浅野温子(51)、荻野目慶子(48)、高岡早紀(39)、奥菜恵(33)。ステージに 並んだ女優陣は輝きを増していた。 夫に先立たれて不倫をする長女を演じる浅野が「このメンツなら慶子ちゃんでしょ」と、 荻野目の過去の修羅場を匂わせる発言をしたり、「皆さん、立派な修羅を抱えている」と 加賀が言うように、それぞれ男女問題でいくつもの修羅をくぐり抜けて来た女優たちだ。 仕事も私生活も、いきいきと生きる女性たちは逞しく、力強く、美しい。様々な恋愛模様を 織りなしてきた女性たちほど、その養分を肥やしにし、いい表情、いい芝居をする女優になる。 それは美容整形やエステでは決して得られない美しさで、まさに彼女たちこそ本物の美魔女と言える。 今、工藤静香(42)が同世代のアラフォー、アラサー女性たちだけでなく、若い二十代からも 支持されている。結婚当初は夫、木村拓哉(39)のファンだけではなく、日本中の女性を敵に 回したかのようなバッシングが聞こえていた。だが、ここに来て、180度評価が変わっている。 二人の娘たちの母親、家庭人という立場を最優先にしているため、結婚後は歌手活動に時間を 割かず、私生活を大事にしてきた。絶頂期の人気を捨てて家庭に入り、二児の母としてお稽古ごとや 学校への送迎もし、母親業、妻業もしっかりこなし、趣味の油絵も個展を開くほどで、画家としても 活躍。 結婚生活はいつまで持つのかと揶揄されながらも、年月を重ねてきたことで主婦としての ポジションは揺るぎないと女性たちは思っているようだ。その上で、空いた時間に、または タイミングを見計らって時間を作り、歌手としても活動する。スタイルを維持し、オシャレ度は ますますアップ、センスの良さも光る。 ファッションだけにとどまらず、ライフスタイルのオピニオンリーダーとして、女性たちは 認めている。たまに番組に登場すると、ハの字眉の目尻を更に下げながら、名前こそ出さない ものの夫や子供との日常を何気なく話す。そこから透けて見える家庭に特別感はなく、むしろ ありふれた平凡さの中であたたかみが感じられる。 だからこそ、余計に女性たちは憧れる。突出したり、いかにも高額所得者然とした暮らしぶり だったり、とんがって最先端を歩く女性アーティストがオピニオンリーダーだった時代は既に昔。 今は、全てにおいて着飾らず、“普通”をいかに自分らしくコーディネートして等身大で生きる かの時代である。 当たり前のように思われてきた結婚という制度が崩壊しかねないほど、独身者が増え続けている今、 王道とも言える女性の生き方を貫く工藤静香の姿は、まさに自分自身のライフプロデューサーであり、 コーディネーターでもある。 『夕刊フジ』2012年11月14日号(13日発行)第6面(毎週火曜日連載)
「時代のサカイ目」第九十回(12.11.6) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第九十回「沢口靖子に何が起きた?」 沢口靖子に何があったのか。NHKドラマ10『シングルマザーズ』の演技が秀逸だ。 これまで沢口と言えば、『科捜研の女』シリーズや『鉄道捜査官』シリーズなど、お堅い 刑事ものという印象があり、正義感の強い優等生的なイメージだった。加えて正統派の美人で、 東宝の伝統的女優の王道を行くタイプだと思われ、それが彼女の持つ堅苦しい雰囲気に輪を かけていた。 1984年、第一回東宝シンデレラオーディションでグランプリを受賞し、映画『刑事物語3 潮騒の詩』でデビュー。85年上半期のNHK連続テレビ小説『澪つくし』で人気者に。以来 28年、東宝に守られて演技を積み重ね、磨いてステップアップしてきた。表現力の乏しさを 美貌で補っていると揶揄され、“人形”とまで言われたこともある。逆に、ややもすれば “美人”が邪魔をして、演技は二の次、三の次にしか見てもらえなかったことで、葛藤も あっただろう。 そんな先入観で見た『シングルマザーズ』に驚かされた。母親の強さ、思い出したくない 記憶のフラッシュバックでの恐怖心など、女性の心の揺れ動きや機微を演じているのだが、 特に全身で苦悩を演じる表現力には目を見張るものがある。一瞬のこわばりの表情に迫力が あり、目力の強さが加わって圧倒的な存在感を示している。 何がきっかけになったのか知る由もないが、明らかにこれまでの沢口の演技とは違う。 人形から脱皮し、真の女優に進化しつつある。 もうひとり、菅野美穂の迫力も見事だ。ドラマ『結婚しない』は、結婚できない女を演じる 菅野と、結婚しない女を演じる天海祐希のW主演。三十代、四十代の未婚女性の日常を 描いているが、菅野のリズミカルな演技と表情は他を寄せ付けない。 ふと投げつけられた「結婚する気がない」という言葉に瞬時に見せたこわばった表情の すごみ。そのこわばりに限らず、菅野は、さまざまな感情が凝縮されたような複雑な表情を する度に、女優の真価を見せている。 米倉涼子がフリーランスの外科医を演じるドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』。 契約先の病院で上司に「手術、ヘタなんでしょ」と真顔で言うような、毒舌のすご腕外科医役が よく似合う。似合うということはなりきっているということでもあり、独善的で我が道を行く というキャラクターが、米倉に定着してきたとも言える。 クラブホステス、交渉人、税務査察官、外科医…。職業は違えど、芯が強く信念の女性を 演じさせると天下一品である。ただ、女性としての細かい機微の表現を求められる役を 演じるとどうか。今の路線を外れたときが米倉の正念場となる。 浮いた噂の出て来ない沢口と、恋の噂がちらつく菅野。過去に辛い恋をしたと言われる米倉。 全くタイプの違う三人の女優だが、三人とも品性がある。それぞれの生きてきた蓄積を エネルギーにし、心・技・体がそろってこその演技力で、下半期のドラマ界を面白くして くれそうだ。 『夕刊フジ』2012年11月7日号(6日発行)第6面(毎週火曜日連載)
「第13回輝く日本レコード大賞(1971年)」の再放送があります。 TBSチャンネル1 12月15日(土)午後 7:30~ 9:20 12月27日(木)午後 6:00~ 7:50 TBSチャンネル2 12月22日(土)午前11:00~12:50
本日11月14日(水)17時00分~18時30分にNHK BSプレミアム で、 『希代のヒットメーカー 作曲家 筒美京平』が再放送されます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/希代のヒットメーカー_作曲家_筒美京平#.E5.87.BA.E6.BC.94.E8.80.85
吉田沙保里さんが先日、国民栄誉賞を受賞しました。おめでとうございます。 吉田さんの名前が、アイドルから付けられたのは有名な話です。南沙織から「沙」。 河合奈保子さんから「保」の字を付けています。 今週の週刊現代2012年11月24日号の巻頭の方のグラビアの一つが吉田さんの 特集です。「国民栄誉賞 吉田沙保里が育った家 三重県津市」です。白黒8ページで 吉田さんの半生を追っています。3ページ目左上に吉田さんの名前の由来の記事が。 週刊現代:http://kodansha.cplaza.ne.jp/wgendai/
「時代のサカイ目」第八十九回(12.10.30) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第八十九回「木村拓哉の折り返し点」 刑事・捜査もの、医療ものが相変わらず高視聴率をあげている秋ドラマ。若者の群像劇や 恋愛系トレンドものが人気だった時代は既に終焉。同時に、ライフスタイルだけでなく、 恋愛志向や生活習慣、家族観などあらゆることにおいての多様化で平均視聴率が20%を 超えるドラマは生まれにくい土壌になった。 1996年の『ロングバケーション』、97年『ラブジェネレーション』、2000年 『ビューティフルライフ』、01年『HERO』、07年『華麗なる一族』…。どれも 木村拓哉(39)主演で驚異的な数字を叩き出し、『華麗なる~』は最終回で40%近い数字に なっていた。 ところが今は主演が誰であれ、ストーリー展開の面白さやセリフのうまさがない限り、 見てもらえない。脚本家、演出家の技量もかなり大きな比重を占める。ある意味、本来の ドラマ作りはこうあるべきだという原点に立ち返ったとも言える。 木村主演のコメディータッチで描く『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』 に注目が集まるが、このところの木村を見ていると、アイドルとしてのあり方に変化が見えてきた。 人気絶頂期の彼は、常に性別や世代を超えて注目される憧れの存在だったが、徐々にひとりの 男性の生き方として、またライフスタイル発信者として、オピニオンリーダーになり、今は どこか守護神的ポジションになっていると見る。 それはジャニーズ事務所の後輩たちだけに通じるのではなく、アイドルを目指している全国の 少年たちに留まらず、若い世代の守護神でもある。人気者になり売れっ子になっても活躍できる 時期は短いと言われる芸能界。10代でデビュー、まもなく40代を迎えるが、常にトップに 居続け、アイドルの熱をそのままに大人の社会人としてもハイポジションにいる彼は、目標となる トップランナーのような存在となっているのだ。 そのありようは、さきごろフットサル日本代表として再び脚光を浴びているサッカーの 三浦知良(45)に通じる。実力を持ち、活躍をし続けるも、若い選手たちの台頭でサッカー 日本代表からは外れたが、サッカーを志す少年少女たちやプレーヤー以外の国民も、誰もが 彼にカリスマ的存在として長く現役を続けてほしいと願っている。 そこには、最年長現役プレーヤーへの挑戦ということだけでなく、サッカーを通じての ブレない生きざまや、人並みはずれた努力を重ね続ける彼への賛辞や尊敬が込められている。 本人が雄弁に語るわけではないが、その生きざまを誰もが指標とする。 木村も、三浦選手と似たポジションに来ている。努力が足りない、人間関係を築けないと 言われる若い世代に説教するわけでも語るわけでもないが、彼の歩んできた足跡に大きな メッセージとエールがある。 努力を続け、常に考え、結果を出し続け、安穏とした日々に自分を置かない潔さを見せ続け、 気づけば40歳という人生の折り返し点にいるが、まだまだ進化しそうな勢いがある。 後に続く人たちにとって、これほど大きな標は他にない。 『夕刊フジ』2012年10月31日号(30日発行)第8面(毎週火曜日連載)
「時代のサカイ目」第八十八回(12.10.23) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第八十八回「ジャニーズ系にも負けない香川」 サッカー日本代表・香川真司(23)の表情が、一段と凛々しさを増してきた。その表情から、 ビッグクラブでの活躍と日本代表としての重圧や責任感が、彼自身を成長させているのが 見てとれる。サッカーについては専門外なのでさて置き、香川はいわゆるアイドルフェイス である。 子どものような無邪気さと慈愛を感じさせる目、笑ったときの口角の上がり具合が好感度の 高いアイドル性を物語っている。ジャニーズ系の顔なのだ。ジャニーズ系には目鼻立ちが くっきりとした松本潤、山下智久タイプと、稲垣吾郎や井ノ原快彦に代表される癒し系がいる。 香川は後者。それでいて眼光は獲物を狙う鋭い光を放つ。 そんな香川を見ようと、試合を足を運ぶ女性が増えたという。サッカーの試合展開に関心は 薄いが、ご贔屓の選手が活躍すると歓声を上げる。香川だけでなく、内田篤人にも。サッカー サポーターたちは彼女たちを、自分たちと差別化して香川ギャル、内田ギャルと呼ぶ。 追っかけといえばアイドルタレントのファンの熱心さを計るバロメーターでもあるが、 近年はスポーツ選手を追いかける女性が増えた。もちろん競技よりも選手個人への思い入れ。 早稲田の学生でハンカチ王子ともてはやされた頃の斎藤佑樹投手もそうだった。 芸能界でのアイドルの追っかけと明らかに違うのは、対象者に対する思い入れ。アイドルの 場合は無名の売れない頃から贔屓にして応援して来たファンたちが、自分たちが応援することで 彼らをメジャーにしてみせるという意気込みがあり、アイドルと一緒に歩もうという姿勢が見える。 選手の場合、ギャルが自分たちが育てて売り出そうとは思ってはいない。努力して今の ポジションをつかんだ彼らにアイドル性を見いだして追いかけているのだから、本来の 活躍に翳りが見えてくると波が引いたようにいなくなる。大学卒業後、日本ハムに入り、 華々しい活躍をしなくなった頃から斎藤選手の追っかけギャルが減り始めたのは、まさに その法則通りと言える。 スポーツ選手に限らず、人気者アイドルは3つの要素が必要である。素材の良さ、場を 与えられること、タイミング。中でも、場を与えられるという条件は、役者なら脚本に、 歌手なら楽曲に恵まれなければどんなに才能があっても、ただの宝の持ち腐れでしかない。 そもそも才能に努力を積み重ねれば、場を呼び込む力も必然的に備わってくるものである。 場を与えられると、今度は重圧もあり、責任感も必要になる。荒波に揉まれずに事務所の 戦略でのし上がって来たアイドルの場合、この重圧を跳ね返すほどのパワーがなく、 いつしか忘れられることもある。 が、アスリートの場合、鍛え上げた肉体と精神とで重圧をステップアップの踏み台に さえしてしまう。その強さがかれれをさらに魅力的にしているのである。 『夕刊フジ』2012年10月24日号(23日発行)第6面(毎週火曜日連載)
「時代のサカイ目」第八十七回(12.10.16) 『時代のサカイ目-酒井政利音楽プロデューサー50周年-』 第八十七回「人気女性アスリートの進路研究」 レスリング吉田沙保里の国民栄誉賞がほぼ決まった。吉田と言えば、五輪と世界選手権を 合わせて13連覇中の、レスリング界だけでなく日本の至宝的存在。国民栄誉賞は、 1977年に本塁打世界記録を達成した王貞治氏をたたえるために設けられた賞で、 これまでに18人の個人と一団体に贈られている。 小泉純一郎内閣時代に、野球のイチロー選手が授与の打診を受けたが、「まだ現役で 発展途上なので、もしいただけるのであれば引退のときにいただきたい」と2度固辞して 話題になった。女性としてはマラソンの高橋尚子と昨年の女子W杯で優勝したサッカー 女子日本代表のなでしこジャパンに次いでの受賞になる。 五輪から2ヵ月、吉田選手は現役続行を表明しているが、同じレスリング48キロ級 金メダルの小原日登美選手、バドミントンの潮田玲子選手をはじめ、バレーボールの 竹下佳江選手など引退する選手は多い。冬季五輪の華、フィギュアスケートの安藤美姫も 来季限りでアマチュアから引退するという。 トリノ五輪金メダルの荒川静香は、早々にプロスケーターへと転向。安藤も荒川の ようにショースケーターへと転進するのだろうか。いずれにしても、華麗な滑りで 魅了し続けてほしいものだが、11月のグランプリシリーズは、指導者不在による 調整不足で中国杯とフランス杯を欠場すると発表したため、今しばらく安藤の スケーティングは見られなさそうだ。 女子サッカーの沢穂希のように、代表からの引退を示唆したものの、周囲の強い希望や 説得で再度前を向いて日本代表を引っ張って行こうと決意した選手もいる。一方で、まだ 競技生活を続行するかどうか、決めかねているケースも見られる。競泳の寺川綾選手。 知的な美人で品のあるたたずまいに、芸能界からの誘いも多いようだが、目先のことに とらわれず、先々の人生をきちんと見据えて、周囲も納得させて、結論を出してほしい。 過去、シドニー五輪の競泳四百メートル個人メドレーで銀メダルを取った田島寧子選手は、 周囲に相談なしに競技から引退し、女優になったことで、結果、競泳界からも芸能界からも そっぽを向かれてしまった。元バレーボール日本代表・大林素子のように、タレントに 転身して自分の居場所を確立した人もいる。引退後、ワイドショーのコメンテーターや バレーボールの解説をしながらタレントとして活躍し、女優への足がかりを作った。 今は舞台で座長を務め、うまい女優ではないがそつなく与えれた役をこなす。 アスリートも役者も、表現者である。競技種目をどこまで極められるかを競って自分と 闘うのがアスリートなら、役柄の心の機微を体の一部や全体を使ってどこまで表現できる かが女優。バレーボールの実業団チームで選手をしていた江角マキコは、体を壊して引退。 女優になった当初はあまり褒められた演技力ではなかったが、良いパートナーに恵まれた ようで、深い表現のできる女優になってきた。 アスリートは現役時代、体力も精神力も限界ぎりぎりまで挑むことを経験している。 とことんの頑張りを積み重ねた先にある栄光をつかんだ人たちには、引退後も輝きを 放ち、いぶし銀になってほしい。 『夕刊フジ』2012年10月17日号(16日発行)第6面(毎週火曜日連載)